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嬉しい言葉「聞いてるうちに反対したくなった」――本会議

 19日は大阪市会本会議。この間、委員会で審議してきた2018年度一般会計決算の認定の是非が議題です。

 災害が相次ぐ中、防災・減災対策や市民のくらし応援はなおざりにして、カジノ誘致や大阪市潰しに熱中してきた大阪市。とても賛成はできません。日本共産党大阪市会議員団を代表して反対の討論を行いまいした。

 日本共産党以外、みんな賛成しましたが、本会議終了後、ある議員が「先生の討論を聞いてるうちに、反対したくなった」と声をかけてくれました。素直に嬉しい言葉です。次はほんとに反対してくれるように頑張ろう!

 今日の討論原稿です。長いですが、よろしければお読み下さい。

私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2018年度大阪市一般会計等決算の認定に反対の討論を行います。

なぜ、認定に反対するのか。

それは、市民のくらし・福祉の向上や、相次ぐ災害から市民の命と財産を守るという地方自治体にとって一番大事な仕事をなおざりにして、大阪市廃止の制度いじりやカジノの誘致に熱中しているからです。

まず指摘したいのは、カジノの誘致についてです。

IR推進局は、この間、何が何でも2025年5月の万博開催前にIRをオープンさせようと、国に法整備を急ぐよう求めるなど異常なまでに前のめりの姿勢でやってきました。夢洲での万博開催には、鉄道建設や橋梁の拡幅、そして急速埋め立てなど多額の費用がかかることから、私たちは万博も夢洲で行うことには反対ですが、万博そのものには人類の進歩にかかわるそれなりの理念があります。それにひきかえ、IRの核であるカジノは、人を不幸にしてやまない文字通りのギャンブルです。この10月に実施された時事通信の世論調査でも、カジノを含むIRの国内誘致には、賛成26.6%に対して、反対が57.9%とダブルスコアであり、4月の世論調査では、自分の住む近くに立地することには賛成20%に対し、反対は実に71%です。多くの市民が反対するカジノを、万博を利用してまで導入しようとするなど、許されることではありません。

IR推進局は、「国際観光拠点」だとか「世界に類を見ないエンターテイメント」を有する「世界最高水準のIR」と綺麗ごとに終始し、ギャンブル依存症の深刻化などカジノの害悪から市民の目をそらそうとしています。

しかし、「大阪周辺には1500万人もの人が暮らしている」などと、大阪を日本進出の最有力地であるかのように表明していたカジノ事業者の多くが、より抱える人口の多い横浜が手を上げるやいなや、足並みをそろえて大阪から撤退したことで明らかなように、カジノ事業者のターゲットは日本国内の人々です。

「大阪IR基本構想案」では、カジノの粗利益の見込みが年3800億円であり、うち外国人観光客150万人から2200億円、国内客440万人から1600億円とされています。ところが、カジノの本場ラスベガスの状況をみれば、2016年の数字ですが、訪問客数4294万人中、国内客が3723万人で87%、海外からは570万人で13%に過ぎません。目的別では、国内外を問わず、レジャー52%、MICE10%、その他、親戚や友人の所に来たとか結婚式だとか諸々が34%であり、カジノはたった4%で172万人です。それを13%という海外客の比率にあてはめればあのラスベガス全体で、海外からのカジノ客はわずか22万人です。しかもアジア諸国におけるカジノの立地はもう飽和状態です。「大阪IR基本構想案」のように、夢洲のカジノ客の25%を外国人が占めるとともに、利益の約60%も、外国人観光客から得ることができるとはとうてい考えられません。せいぜい1割程度という専門家の見解が妥当だとすれば、海外からのカジノ客は多くて50万人~60万人、「大阪IR基本構想案」の三分の一程度、得られる利益は700憶円余りということで、結局、利益の大半、実に3000憶円を超える莫大なお金が大阪周辺の人たちの懐から巻き上げられることになるというわけです。

人を不幸にし、経済も悪くするカジノを誘致するなど、およそ地方自治体のなすべきことではありません。

あらためて、カジノ誘致はやめるよう求めておきます。

一方、こうしたカジノ誘致にともなう夢洲の開発に血道をあげるなかで、肝心の市民の安全・安心や暮らしが後回しになっていることです。

まず、防災・減災対策について指摘いたします。

昨年の台風21号による湾岸部の被害をうけて「高潮対策検討会」がもたれ、堤防外の護岸等のかさ上げや強化対策の検討が始まっていますが、長年の地盤沈下によって、6mから7mといった計画高を確保できなくなっている防潮堤のかさ上げが遅々として進んでいません。大正区の鶴町では、計画高から見て27㎝も沈下しており、台風21号の際、もう少しで防潮堤を超えそうでこわかったという声が聞かれました。此花、大正、住之江の3区でかさ上げが必要な防潮堤の延長6.7㎞のところ、工事が遅れに遅れ、今年度末で3.0㎞にしか到達しないうえに、残る3.7㎞の計画すらまだ立てられていません。台風は毎年やってきますし、年々強くなり、大きな被害が想定されると言われています。早急に計画を立て、進捗をはかるべきです。

また、大雨等に備える浸水対策も、時間60mm対応をかかげて長年整備を続けていますが、いまだ80.1%の整備率です。とりわけ、淀川・東淀川・西淀川などの浸水対策としてH3年度に着工した淀の大放水路は、当初はH17年度完成予定だったものが、いったんH22年度まで伸びて、今日では、令和16年までかかると言われています。昨今のように時間90mmとか100mmとかの豪雨が相次ぐ中で、時間60mm対応では間尺にあわない面もありますが、ともかく、計画を立てて長年にわたって工事を進めてきたわけです。一日も早く完了させるよう求めておきます。

そして、こうした、ハード対策の水準を上回る災害に見舞われた時、市民の命を救うためには一人ひとりの防災意識の向上はもちろんですが、支援が必要な方たちを救うためには地域の取り組みの力が不可欠です。東日本震災を受けて整備が義務付けられた「避難行動要支援者名簿」について、本市は作成はしたものの2割の地域で、受け取りを拒否しておられ、名簿が渡った地域でも具体的な支援計画にはつながっていない場合が多いなど、看過できない状況があります。その大きな要因が担い手の高齢化など地域の疲弊であることははっきりしています。いま、全国の多くの市町村が同様の悩みを抱え、さまざまに検討を重ね地域活動への思い切った支援の模索が始まっています。そうしたなかで、本市の、「補助金」と「中間支援組織」のみで対応し、あとは区任せ、検討や模索の姿勢ももたないといったあり方はあまりにも無責任だと言わざるを得ないのです。

市民負担についても一言指摘いたします。2018年度、介護保険料が17.3%も値上げされ、市だけで比べたら本市は、「日本一」高い保険料となり、市民から文字通り悲鳴が上がっています。都道府県化された国民健康保険料も、激変緩和が終わればたいへんな負担増となることが明らかであり、不安が広がっています。早急に対応を検討し、この不安を取り除くことが求められているのに、それどころか、2018年度は一般会計からの繰り入れを大幅に減らしてしまいました。到底、認められません。

最後に、大阪市廃止・分割、いわゆる“都構想”についてです。ラストチャンスだ、二度とやらないと叫んで行ったあの住民投票で決着済みの「大阪市廃止」が蒸し返され、2017年6月から2018年度末までの2年足らずで23回もの法定協議会が重ねられました。とりわけ、本決算年度である2018年度には、貴重な税金を使って「経済効果の試算」なるものがゴリ押しされたり、密約騒ぎがあったりで、市民不在の極みといった体たらくでした。そのうえ、選挙後は周知のとおり、「コストがかかりすぎる」という批判をかわすために、庁舎は建設せず、現市役所を共同で利用する「合同庁舎」の案まで出される始末で、市民からは「これでそれぞれ独立した地方自治体といえるのか」「結局、特別区などどうでも良いということではないか」といった怒りの声が上がるとともに、総務大臣も務めた片山善博早大教授も「地方自治体の体をなしていない」と指摘するなど、懸念や批判が集まっています。とにかくまともに議論しない、結論ありき、スケジュールありきで、ただただ「協定書」づくり、住民投票へ突き進もうとする、こういう姿には、市民への思いなどまったくないと言わざるを得ません。最悪の地方自治破壊、百害あって一利もない大阪市廃止・分割はキッパリとやめるべきだと申し上げ、以上、反対討論といたします。

 

カジノより防災・減災を    一般決算特別委員会

 11日は大阪市会決算特別員会で質疑。持ち時間は1人50分で、日本共産党からは私1人だけ。課題はたくさんあるけれど、「カジノより防災・減災」をテーマに質疑しました。
 「何がなんでもカジノ。万博までにカジノ」という異常なカジノ前のめりを批判し、背後に膨大な人口を抱える横浜が手をあげたとたん、大阪でのカジノを標榜する事業者が激減し横浜へと鞍替えしたことで、カジノのターゲットが国民であることがはっきりしたのではないか、と認識を聞きました。なにを聞いても、カジノについてはまったく触れず「世界に類をみないエンターテイメント」を有する「最高水準のIR」という絵空事を繰り返すIR推進局。きれいごとを並べても核はカジノ。何千億ものお金が、国民・市民の懐から消えてしまう上に、ギャンブル依存症を深刻にするカジノなど、地方自治体のすべきことではありません。

 こんなムダな巨大開発はやめて、待ったなしの防災・減災に注力すべきです。湾岸部の防潮堤のかさ上げや、浸水対策などのハード面とともに、救える命をしっかり救うソフト面の備えについて質疑。日常的な活動も、発災時の避難や安否確認も、地域の力なくしてはできません。地域の皆さんは必死で頑張って下さっています。

 その一例として、地元・城東区の鴫野地域活動協議会の取り組みを紹介。鴫野地活協作成の「防災マップ」は、地域の皆さんが実測された地盤高が書き込まれ、川より地盤が低いところはどこかが一目でわかるとともに、避難所や防災倉庫はもちろん、消火器・AED・防火栓・防火水槽・公衆電話などなどがどこにあるのか、車止めがあって行き止まりのところはそのカギがどこにあるか、どの防災倉庫には何が備蓄されているか、など、地域の防災上の情報がすべて盛り込まれています。

 発災後、無事な方に自ら掲示していただくための「無事です」ステッカーを全戸に配布されていますが、これも、本当に必要な方の安否確認について真剣に考えられたからこその知恵です。要所要所の電柱には、想定浸水深のシールが貼られていますが、すべて地域の皆さんの取り組みです。
こうした地域からしっかり学び、地域任せにせず行政がやるべきことはもっとあります。同時に、大きな役割を担っていただく地域が、温度差もさまざまで、多くが疲弊しています。全国の自治体が、地域活動活性化のためにいろいろな模索をしています。東京特別区では、町会への支援を区の責務と定め、町会の事務に職員を従事させるなどの人的支援をする、などの条例をつくる区が出てきています。また、職員による地域担当制を重視して、思い切って職員を地域に張り付かせ、職員が地域とともに汗をかくことで、地域目線の自治体になっていく。そんな取り組みも増えています。
大阪市では、補助金と中間支援組織の仕組みだけつくり、後は完全に区任せです。この間の検証とともに、新たな模索をしなくては。私はかねがね、大都市・大阪で、地域と本気で向き合うために、1小学校区に1~2人の職員を配置して、地域と苦労をともにし、地域と行政をつなぐようなことをやってみるべきではないか、と考えています。そのことを提案し、大阪市をなくすことにかけているエネルギーを、そうしたことにこそ振り向けるべきだ、と申し上げ50分の質問を終えました。

市民おきざりの極みです    第28回法定協議会

 決算委員会が始まりました。私は日本共産党からたった1人の委員として、50分という持ち時間をどう使うか、「カジノよりくらしを、防災を」という皆さんの声をどう届けるか、やりがいがあるとはいえ、頭の痛い思いをしています。

 そんななかでも、昨日5日、第28回の法定協議会が開かれました。決算準備に追われて、とっても雑なレポートになることをお許しください。インターネットで録画をご覧いただけますし、それほど日をおかずに議事録も出ますので、どうか詳しくはそちらをご参照下さい。

 府と特別区、そして一部事務組合と“三重行政”になる“都構想”。議題の一つはその役割分担についてでした。

 ニア・イズ・ベターをうたい文句にしながら、「介護保険は一体でやった方がいいから一部事務組合で」といとも簡単に言う知事、市長、維新の議員。私は大阪市の廃止・分轄には反対ですが、仮に分割するとして、こんなにも身近なことを自分たちで議論し決めることもできなくて何がニア・イズ・ベターか、と意見を表明させていただきました。推進派は口をそろえて「介護保険料にバラつきが生じてはいけない」と言います。「大きな大阪市で一律のサービスをしているから駄目だ」「地域の実情に応じた住民サービスを」と言って、まさにバラつきを作ろうと言うのが大阪市廃止・分割=“都構想”なのではないでしょうか。やっぱり支離滅裂です。

 もちろん、どちらがいいかは議論が必要ですが、この問題だけでなく、「住民サービスの維持」も「財源配分」もスケジュールありきで深い議論もせず、方向性とやらをどんどん決めていくやり方。いくら公明党の約束を取り付けたからと言って、あまりに乱暴。市民おきざりの極みです。

伝えられたでしょうか?  福島区つどい

 昨夜は福島区にお邪魔して、「都構想、カジノで大阪はどうなるの?」と題した市政報告をさせていただきました。

 大昔(1996年)に小選挙区の候補者としてお世話になった地ではありますが、お顔触れもずいぶん変わった感じで、存じ上げない方がかなりおられました。ああ言えばよかった、こう言うべきだった、とクヨクヨ考えてしまうのはいつものことですが、地元とちがって、継続的に状況をお伝えしていない方たちにお話しするのは、いつも以上に不安があります。どこまで伝わったでしょうか。

 4月の選挙後の力関係の激変で、不本意ながら「住民投票まで1年」と覚悟しなければならなくなった今、維新を好きだという人にも、ほんとうに大阪市をなくしていいのかを立ち止まって考えてもらえるような、冷静な働きかけが大量に必要です。地域からそんな動きをあちこちで起こしていきたい。そんな思いが伝わったことを願います。

 いくつか質問やご意見ををいただきました。

 「政党支持の違いを超えた動きをどうしたらつくれるか」というご質問。まさにそれが一番大事。大急ぎで、みんなで知恵を出し合いたい、と心から訴えました。

 区の広報誌を使って、まるで“都構想”を推進するような広報がされていることに抗議のメールを送っても、“行政として当たり前のことをしている”と言わんばかりの回答しか返ってこない、という怒りのご意見。私も同じことを言い続けていますし、維新以外の会派がいろいろな形で広報の仕方がおかしい、と指摘を繰り返していますが、副首都推進局はまったく聞く耳を持ちません。市民や議会が何を言おうが、市長の言うことだけを聞く。住民全体の奉仕者ではなく、市長の私兵となっている副首都推進局のあり方にあらためて怒りがこみ上げました。

 教育の問題に一番関心がある方、「公文書館」はどうなってしまうのか、とおっしゃる方、などなど、ご質問やご意見は実に多岐にわたります。これから「大阪市をなくさんとって」のムーブメントをおこしていくうえで、いろんな人の興味や関心に合わせて、いろんな人がいろんなことをしゃべらないといけないなあ、とつくづく思いました。

 

 

 

何が何でもカジノ、何でもかんでも“競争性”  9日本会議

 昨日は本会議でした。

 開会の際に上程された補正予算やさまざまな条例改正などの議案について、この間、各常任委員会で審議してきたものを、議決。

 補正予算のなかには、IR=カジノ誘致を万博に間に合わせたいあまりに、通常は事業者が行う夢洲の環境影響評価に向けた現況調査を、肩代わりして府と市でやろう、という、何が何でもカジノ、カジノという姿勢が露骨に表れたものが含まれています。

 また、現在は大阪市住宅供給公社が行っている市営住宅の管理を、民間でもできるように指定管理にする経費も。現状で何の問題もなく、しかもかなり低コストで公社が実施しているのに、何でもかんでも“競争性”“競争性”。結局、コスト縮減を競わせて、ますます“官製ワーキングプア”を蔓延させるだけではないでしょうか。住民の皆さんに不都合や迷惑がかかるような問題が起きないかどうかも心配です。

 中学校体育館への空調設置など、おおいに賛成できるものも含まれた補正予算でしたが、カジノへの前のめりの姿を見過ごすわけにはいかなくて、日本共産党大阪市会議員団の4人は、井上議員が討論をおこなったうえで、反対しました。

 何が何でもカジノ、なんでもかんでも“競争性”。このままではいけない、という思いが募ります。

歴史の残像=特別区をまざまざと   財政総務委員会行政視察

 9月の4日と5日、財政総務委員会の行政視察で、東京の特別区の現状や課題をいろいろ伺ってきました。

 日本共産党大阪市会議員団は、1週間以内に報告書を議長に提出するということにしています。だいぶ遅れてしまいましたが、やっと完成し提出しました。長いものですが、印象に残ったことなどをまとめました。よろしければご笑覧下さい。

2019年度大阪市会財政総務委員会 行政視察報告書

日本共産党大阪市会議員団  山中智子

 

  1. 日程  2019年9月4日(水)~5日(木)
  2. 視察先と視察項目
    • 財政調整制度の運用実態と区の財政について(板橋区役所)
    • 財政調整制度の運用実態と区の財政について(千代田区役所)
    • 清掃一部事務組合の概要について(東京23区清掃一部事務組合)
    • 特別区人事・厚生事務組合の概要について(特別区人事・厚生事務組合)
    • 財政調整制度の概要について(特別区長会事務局)
  1. 視察内容と考察

4月の議員選挙と、無理やり同時選となった知事・市長選挙を経て、大阪では、2015年に実施した大阪市を廃止すべきか否かを問う住民投票が、来秋にも再び実施される可能性が高まっている。そういうなかで、今回、財政総務委員会の視察は、東京における都区制度について、財政調整制度と一部事務組合に絞って視察を行った。

以下、それぞれの項目について、内容と考察を報告する。

[財政調整制度について]

2つの特別区役所(板橋区・千代田区)と特別区長会事務局で、財政調整制度についてお話を伺った。制度のもつ問題点は学び、議論もしてきたつもりだが、財政調整交付金が多い板橋区(30年度は23区中6番目に多い)と、少ない千代田区(30年度は3番目に少ない)双方の財政担当者の生の声は、予想をはるかに上回るインパクトがあった。

事前に事務局を通じて、

  • 財政状況と課題
  • 突発的な事業などへの予算対応方法
  • 都区財政調整制度に対しての区の考え
  • 平成19年度三位一体改革の際、都と特別区の主張がぶつかったが、その決着についてどう受け止めているか
  • 大阪の制度設計案で設置がうたわれている「第三者機関」について、必要性を感じるか

といった質問が両区に届いており、両区とも、一般的な制度解説ではなく、これらの質問に率直に答えることを重視して下さり、ありがたかった。

板橋区の小林緑政策経営部財政課長は、「財政状況と課題」について、日ごろの思いを吐露するように、

・千代田区や港区など中心区との格差が大きすぎる。民生費が6割を占める板橋区の現状を訴え、財政調整にそういう点を反映することを望んでも、中心区の要望とはぶつかりまとまらない。23区がまとまらなければ“強い都”と渡り合えないので、根本のところは黙っている。

・結果、財政が硬直化し、必要な施設の更新が困難になるし、産業振興への投資も進まない。中心区は国や都の投資もあって開発が進むが、周辺区は産業振興等に投資する財源は出てこない。

・課題も多い制度ではあるが、都区財政調整制度ではなく、国の地方交付金を受けると想定すると、都区財政調整の交付金の方が多いだろう。やはり、都の財源があるからこそ出来ること。逆に、大阪はその財源はどこから持ってくるのか聞きたいと思っていた。

・(地域の実情を踏まえた板橋区独自の住民サービスはあるか?との質問に答えて)中心区はともかく、周辺区はそんなこと出来ない。横並びである。

など、お話しくださった。区財政の窮屈さとともに、大阪の制度設計への率直な疑問が飛び出したが、当然の疑問だと思った。

一方で、千代田区の中田治子政策経営部参事は、

・都区財政調整制度は、さまざまな歴史からたどりついたものでせめぎあいの歴史。そもそも区の権限が制限され、決して都と対等ではないなかで、「権限をいただく」という立場でやってきた。

・千代田区にとっては、財政調整制度は頼れるものではない。45:55の配分について「何を積んで都が45なのか内訳がわからない」状況や、年度によって変動はあるものの、市町村の基幹税目である固定資産税、法人住民税約3000億円を都にもっていかれ、31億円(?)しか戻らない状況である。千代田区は、千代田市となり、千代田だけでやりたい。そうすれば、85万人の昼間人口に対するサービスや、老朽化する大規模インフラの更新などがもっと出来る。しかし、長い歴史のなかで23区の仲間でもあり、“二重外交”という感じだ。

・昼間人口の多い千代田・港など中心区は、財政調整に昼間人口を反映させてほしいと考えるが、23区の中では少数派であり、こうした要望ははねられてしまう。

・千代田区も自主財源の豊かさだけで財政を運営しているわけではなく、委託等で職員を削減するとともに、PTA研修などの事業の廃止・休止・見直しをするなどの経費削減を行ってきた。同時に、23区一律だったNTTなどの地中埋設物の使用料について、地価を反映したものへの見直しをかちとり、使用料・手数料収入が60億円を超えるようになるなど、歳出抑制、歳入確保につとめてきた。そういうなかで、千代田区は子ども費を増やし、学童クラブの設置や充実などの独自のサービスを行い、人口が3万人台から61,269人(昼間人口は853,068人)へと増えている。

以上のように、財政調整交付金の多寡という点では対照的で、財政状況や課題も大きく異なる板橋区と千代田区が、財政調整制度に共通の問題を感じていることがわかる。そして、そのことは特別区長会事務局でお話を伺って、いっそう整理できたのではないだろうか。

第一に、財政調整の配分割合という最も肝心な点で、都が45%とする内訳問題は解決していない(ブラックボックスである)、と両区でも特別区長会事務局でも、全員の方が言われた。特別区側が求める45%の根拠を都は示さない。かつて3回、都が行っている事務のうち市町村事務は何か、と分析したが、都の主張と区側の主張にズレがあり、決着をみていない。

この問題について、志賀特別区長会事務局は、大阪の制度設計は事務事業を分けたうえでの財源配分なのでうらやましい、と言われた。専門家に限らず、市民のなかでもそういう解釈・理解があり得るということを心にとめておく必要があろう。

第二に、特別区長会事務局では、この財政調整制度について、「取り合いが宿命」だと言われた。たとえば、今般、児童福祉法改正で特別区に設置可能となった児童相談所の運営経費など、特別区側が財政調整に反映させるべきだとする事務を、都は言を左右にして財政調整には反映させない。こうした争い・議論が果てしなく続く、都と特別区の「取り合い」がある。

同時に、昼間人口への対応(中心区)や社会保障需要への対応(周辺区)など、特別区の意見がバラバラな条件を財政調整制度に反映させることはできず、大きな配分の変更がないなかで、結局、特別区同士でも「取り合い」にならざるを得ない。

第三に、大阪の制度設計案で、東京の特別区制度より優れたものとして、また前回のバージョンアップと称して、財政調整で府と特別区がもめた時の「第三者委員会」が盛り込まれているが、その必要性については両区とも、「まず23区の主張が一致しないので、第三者機関があっても、おりあえないだろう」などと、完全に必要性を否定された。

第四に、両区でも特別区長会事務局でも、「いずれも交付団体である大阪府と大阪市で、この財政調整制度をめざすことをどう見るか」という、他団体に質問するのはいかがなものか、とも思われる質問が出た。千代田区の中田参事は「イメージできない」と言われ、特別区長会事務局では「区に配れるだけの財源が確保できるか」だと言われた。

第五に、特別区長会事務局では、「この制度のメリットは、大都市地域としての一体性であり、デメリットは、自治体としての独自性をもてないこと」といわれた。大阪市廃止・分割推進派の言う「地域の特性をいかしたサービス」「ニア・イズ・ベター」は完全に破綻しているとしか言いようがない。

[一部事務組合について]

  • 東京二十三区清掃一部事務組合

大阪の制度設計案では、廃棄物処理は特別区の事務とし、すでに設置されている広域組合に特別区が参加するというものになっており、清掃の一部事務組合の説明聴取は参考にならない気がして、あまり興がわかないというのが事前の正直な気持ちだった。

しかし、清掃事業の移管は、都の内部団体にまで成り下がった特別区が、自治権拡充に取り組み、一つの画期となったH12年の「都区制度改革」の象徴のようなものであるとともに、その後の曲折が示唆にとんだものでもあり、大変興味深くお話を伺った。

従来、ごみの収集・運搬・処理・処分は都が行ってきたが、自治権をめぐる運動の中で「住民に身近な廃棄物処理さえ出来ない基礎自治体はありえない」とする国の意向もあり、H12年に特別区に移管された。そして、ごみの収集・運搬は各区で実施することとなったが、焼却などの中間処理は、施設がない区もあることなどから一部事務組合を設置し、共同処理することとなった。

当時は、近い将来の自区内処理を掲げ、焼却施設のない特別区は建設し、H17年度中にはこの一部事務組合は解散するという計画だったとのこと。私自身、ちょうど都区制度改革の頃に、豊島区が新設した豊島清掃工場の視察に伺った記憶があるが、そのように移管にあわせて新設した区や、それ以降に設置した区もある。

しかし、中心区の用地確保の困難さに加え、その後のゴミ量の減少などもあり、現在は自区内処理にはこだわっておられないようだ。

それには、20年近く一部事務組合で実施してきて、工場のある区とない区の負担感の差や、区の独自性が発揮できないことや区の細かな要望には応えられない、というデメリットはあるものの、建て替えやメンテナンスで2~3工場運転を停止しても補完しあえる、工場数が多く複数のプラントメーカーと関わるので、特定のメーカーの言いなりになることがない、などなどのメリットも多く、当初の一部事務組合の解散という課題は、手放しておられるように拝聴した。

本市を含め、廃棄物処理を単独で行ってきた団体が、ごみ減量への対応や効率的な施設整備という観点から、広域的な処理に移行し、新たに一部事務組合を設立する時代である。東京二十三区清掃一部事務組合が培ってきた廃棄物の中間処理という、きわめて住民に身近であるとともに、施設の存在が住民にとって必ずしも歓迎すべきものではないゆえに、施設のある、なしの負担感の差が大きい事業を、どう共同処理するのかというノウハウは、おおいに学ぶべきものがあるのではないか。

  • 人事・厚生事務組合

同組合は、S25年の地方公務員法の交付により義務付けられた人事委員会を共同処理するためにS26年に設立された。当初の名称は「人事事務組合」である。その後、生活保護法に基づく更生施設等の設置・管理を共同で行うことになり「人事・厚生事務組合」に変更された。いずれにしても、介護保険から情報システム管理、民間の児童養護施設や生活保護施設の設置認可、指導、助成、さらには、公立の福祉施設、市民利用施設、斎場、霊園の管理等にいたるまで、府が欲しがらず、特別区に分けることのできない事務をすべてぶちこむ大阪の一部事務組合とはまったく異なる限定的なものであることを申し添えておきたい。

同組合の副管理者であり、特別区長会事務局長でもある志賀徳壽氏は冒頭の挨拶で「組合は、自治権拡充の歴史なくして語れない」とおっしゃった。そして、「一定結実したH12年の都区制度改革から20年経つが、いまだにさまざまな課題がある」と、自治権獲得がいまだ道半ばであることを強調された。私なども「半分自治」「半人前の自治体」と表現しているし、特別区が特別に権限の制限された自治体であることは認識しているが、長年にわたって特別区側で生き抜いてこられた方のこうした課題の提起は、あらためて重く受け止めた。

人事に関して、一部事務組合で行うことのメリットは、やはりスケールメリットとのこと。幼稚園や保護施設など採用数の少ない職種の採用や訴訟への対応には23区という規模が必要であるし、採用や給与などの条件を各区バラバラに行えば、人気の偏りが必ず出る。さらに、国や政令市と併願する人も多いなかで、特別区を選んでもらい質の高い職員を確保することは、バラバラでは無理だ、とのことだった。一方のデメリットは、給与や昇進などを統一した基準で行わざるを得ず、各区の自由度が制限されることとのことだった。

メリットは一体性からくるスケールメリットであり、デメリットは各区横並びであること。財政調整であれ、一部事務組合での事務であれ、結局これにつきるし、それは当然なのだろうと思う。

人事だけでさえ、メリット・デメリットのバランスをとりながら運営されているのに、大阪の制度設計の膨大な一部事務組合を、いったいどう運営しようと考えているのか。また、東京でさえ、特別区がバラバラに採用等を行えば、職員を確保できない、と断言しておられるのに、大阪の制度設計案では、各特別区となっている。給与も各区バラバラということになれば、いったいどんなことが起きるのか。職員が確保できないような事態に陥ったとき、住民にかかる計り知れない迷惑の責任はいったい誰がとるのか。東京のお話を伺えば伺うほど、現実を見ず、“副首都にふさわしい”とか“広域機能の一元化”とか“ニア・イズ・ベター”などとお題目をとなえ続けることの無責任さに気づいてほしいという思いがこみあげた。

今回の視察で、「せめぎあいの歴史」「バランスをとるのが難しい」「妥協の産物」「二重外交」といった表現を何度も聞いた。戦中に「帝都防衛」と称して強行されて以来の長い歴史があるからこそ、このせめぎあいながら、バランスをとり、苦労して妥協の産物を生み出す歩みを止めるわけにはいかないということだ。

戦後74年間、自治権拡充の運動を永永と行ってなお、一般市にも満たない権限しかない特別区。それぞれが一般市となり連携、協力していく、という望ましい方向性をもったものの、国も都も認めるはずがない。結局、この都区制度のもとで、少しでも自治権拡充、権限や財源の確保、都との対等の関係確立を求め続けるという現実的な対応に苦労しておられる、というのが、本当のところだと思う。そういう特別区の皆さんから見れば、なぜ、わざわざ政令市を廃止してまで、この「歴史の残像」とも言われる特別区をめざすのか。財政上の見通しはあるのか。今回の視察でお目にかかった皆さんも、不可思議な思いをもちながら接してくださったことだろうと拝察する。

視察の最後に、特別区協議会が前回の大阪での住民投票や制度設計を分析してまとめた『「大都市地域特別区設置法」にもとづく特別区制度設計の記録』という分厚い書籍を、各会派に下さった。「今後、特別区制度を検討する際の参考とするため」にとりまとまめられたとのこと。特別区にとって、戦後74年経つ現在でも、特別区制度というものが検討を続けなければならない制度であり、大阪がいったいいかなる議論をしながら、いかなる制度設計をしていたのか、不可思議だからこその労作なのではないか、と複雑な思いでいただいた。

繰り返しになるが、これまで論文等で学び議論も重ねてきた都区制度であるが、その制度のなかで、苦労を重ねておられる方たちの生の声をお聞きできた今回の視察は、たいへん有意義であると同時に、この道に大阪市民を引きずり込むような愚策は、決してとるべきではないということを強く胸に刻んだ視察であった。